大量に食べては吐くことがやめられない、過食嘔吐。
今でこそ普通に食事ができるようになった私ですが、かつては過食嘔吐に悩む女性の一人でした。
過食嘔吐による恐ろしい弊害は様々ありますが、今回メインでお伝えしたいのは「歯の健康が失われること」についてです。
今回は、約7年間の過食嘔吐の末、摂食障害が完治した今でも歯医者通いが終わらず、70万円以上の治療費をかけている私の体験談を綴っていきます。
過食嘔吐に悩んでいる方や、「このまま過食嘔吐を続けたらどうなるんだろう?」と不安を感じている方にぜひ読んでいただきたい記事です。
Contents
「過食嘔吐で歯が溶ける」は本当。酸蝕症の恐怖

「過食嘔吐を続けると歯が溶ける」という噂を聞いたことがあるでしょうか。
事実、過食嘔吐によって歯は深刻なダメージを受けます。
過食嘔吐によって起こる歯科トラブルで最も多いと言われているのが、酸蝕症(しょくさんしょう)です。
酸性の胃液によって歯が溶け、知覚過敏を引き起こしたり、虫歯ができやすくなったり、歯の色が変わってしまったり……これらが、酸蝕症の主な症状です。
症状がひどい人になると、若くして入れ歯になってしまうこともあるのだとか。
過食嘔吐の他にも、逆流性食道炎を患っている人や、糖分の多い炭酸飲料を頻繁に飲む人にもよく現れる症状のようです。
過食嘔吐後にしてはいけないこと
私は過食嘔吐をしていた頃から、この酸蝕症の存在を知っていました。
ネットで見た胃液で歯の表面が弱っているときに歯を磨くと、ますます症状が悪化するという情報を参考に、上記のような対処法を実践していた私。
しかし、この対策によって必ずしも酸蝕症を防げるというわけではありません。
比較的きちんと歯磨きをしていたのにも関わらず、過食嘔吐になってから圧倒的に虫歯の量が増えたのです。
神経に達する虫歯が頻発
過食嘔吐を始めてから、今までと比べて明らかに症状が深刻な虫歯が増えました。
虫歯が神経にまで達し、激痛を引き起こすこともしばしば。
神経の治療って、本当にしんどいんですよね。
死んだ神経をえぐりだすあの治療、痛いわ怖いわで歯医者に通うのが苦痛でたまりませんでした。
歯が溶けるのが怖いのに、どうしてもやめられない

歯医者に通って歯を治療してもらうたび「このままではいけない。過食嘔吐を治さなければ!」と決意するのですが、摂食障害はそう簡単に治るものではありません。
歯医者の帰り道にスーパーやコンビニによれば、さきほどまでの決意はどこへやら。大きな買い物袋を抱え、家路を急ぐ私がいました。
罪悪感やストレスにより、過食嘔吐は治るどころか日々悪化していきます。
夜は泣きながら過食嘔吐を繰り返し、朝になれば何食わぬ顔で会社に出社し、たまに歯医者に通い、また過食嘔吐をして……という負のスパイラルが永遠に続くような気さえしていました。
歯の治療にかけた費用を計算してドン引き

晴れて過食嘔吐を卒業することができてからも、過去の自分の行動を悔やみながらの歯医者通いは続きました。
ここで、もうひとつの問題が出てきます。
実は、私にはこの数年間の間ひたすら目を背けてきたものがありました。
それは、歯医者でかかった治療費の合計です。
ざっくり計算しただけでも70万オーバー
過食嘔吐をやめて精神的にも余裕が生まれてきたころ、意を決して治療費を計算してみることにしました。
計算したところ、まさかの70万円オーバーという結果。
しかもこれはカード明細に残っていた被せ物の代金や領収証を残していた大きめの治療のぶんだけなので、もしもこれに日々のこまごまとした治療費を合わせたら……もうこれ以上考えたくありません。
過食嘔吐をしていなかったら、私の手元に70万円が残っていたかもしれない。
ほんの数年の過ちが一生モノの歯の健康を損ねてしまったという事実が、治療費の金額を明らかにしたことでよりリアルになった瞬間でした。
高額治療費の原因はセラミック
治療に70万円もの大金がかかったのは、私がハイブリッドセラミックやオールセラミック、ジルコニアといった保険のきかない被せ物や詰め物を選ぶことが多かったからです。
銀歯やプラスチックといった保険治療の範囲内でお願いしていれば、おそらくこんなに治療費がかかることはなかったのだと思います。
しかし、過食嘔吐により自分の歯を痛めつけてしまった負い目からでしょうか、当時の私はお金をかけてでも綺麗な口元にしたいという気持ちが強かったようです。
その歯医者が審美歯科を強く勧めてくる方針だったこともあり、勧められるままに保険外の治療を受けてしまいました。
引越しを機に治療途中で転院したのですが、あのまま通っていたら70万円ではすまなかったと思います。
長期間の治療なら、歯医者選びはかなり重要

過食嘔吐などで歯医者に長く通う場合は、歯医者選びもかなり重要です。
私のように、「家から近い」「仕事終わりにいける歯医者はここしかない」「予約がとりやすい」といった消去法で選ぶのはおすすめしません。
当然のことですが、お金をかけたからといって被せ物が一生持つというわけではありません。
ハイブリッドセラミックにしろオールセラミックにしろ、歯の噛み合わせや衝撃によって簡単に割れることもあるので、治療する前によく主治医と相談した方が良いと思います。
ちなみに今通っている歯医者は、セラミックを推奨せず今ある歯をなるべく長く持たせるという治療方針のため、びっくりするほどお金がかかりません。
治療もていねいで、納得いくまで説明をしてくれる今の歯医者にもっと早く出会いたかったなと思います。
治療の期間が長くなるほど、当然治療費も増えていきます。私のように高いお金をかけて後悔してしまわないよう、歯医者は慎重に選んでくださいね。
今すぐ過食嘔吐をやめろなんて言えない。その代わりに伝えたいこと

過食嘔吐を卒業した今でこそ「早く過食嘔吐をやめればよかった」と思える私ですが、渦中にいるときは「歯なんてどうなったっていい」と思うこともありました。
同時に、「もし虫歯になったら、歯医者で治せばいい。治療費がかさむのは正直しんどいけど、いま過食嘔吐を止めることの方がもっと現実的じゃない」とも。
本当はやめたいのに、食べて吐くことがどうしてもやめられない。
そんな切羽詰まった精神状態のときに、「過食嘔吐はやめたほうがいいよ」「歯は大事だよ」なんて正論を言われても何も響かないと思います。実際、私がそうでした。
なので、いま過食嘔吐に苦しんでいる人に伝えたいのは、とりあえず定期的に歯医者に通う癖をつけてほしいということ。
「吐いてることがバレたらどうしよう」「私はちゃんとデンタルケアをしてるから大丈夫」と歯医者を敬遠している人もいるかもしれませんが、ぜひ定期検診には行ってください。
早い段階で虫歯が見つかれば、治療も短期間ですみます。歯医者に行くことで歯の健康に対する意識が高まり、過食嘔吐をやめるきっかけになることもあるかもしれません。
一番いけないのは、私のように虫歯が悪化するまで放置してしまうことです。
過食嘔吐をすぐにやめることは難しいかもしれませんが、数ヶ月に1回くらい歯医者に行くことならどうにかできるはず。
歯は一生モノで、一度削ってしまったらもう元には戻りません。上から被せ物をすることはできますが、どうしたって健康な歯の丈夫さにはかないません。
歯の治療は、思っている以上にお金がかかります。ただでさえ過食嘔吐で食費がかかるのに、そこに歯の治療費が上乗せされるだなんて考えたくもないはず。
過食嘔吐が治った今でも歯医者に通い続ける私のようにならないためにも、ぜひ歯医者に足を運んで定期検診を受けてくださいね!